2009/02/19

イラク戦争に見る破壊の恐怖と人間の強さ


 先週横浜市が主催する国際交流セミナーに参加して、駐日イラク大使の短い講演を聴いた。 イラクの歴史から先の戦争と現在を語るものだった。 聖書に出てくるサマリア人とはシュメール人の事だったかと、英語と日本語を交えたブレゼン資料を見ながら一つ賢くなった。

 戦争による街の破壊と殺戮は嫌というほど報道されている。 話の中で驚いたのは湾岸戦争以降の経済封鎖や戦争によって、貨幣の購買力が一万分の一になったこと。  大学の教授などは生きるために本を道端で売ったそうだ。 中流階級は壊滅的な打撃を受けたとのこと。 世界第三位の石油埋蔵量を持つこの国はもともと大変豊か。 貨幣購買力は世界トップクラスだった。 ブルネイのようなものだったのだろう。 戦争というのは破壊である。 自分の資産がある日突然一万分の一になって果たして生きていけるか、生きる気力が残るだろうかと思う。 それでも大多数の人々は生き残り、生き続けようとするところが人間の強さだ。

 いまのイラクで最も多い年齢層が19歳というのも驚く。 戦いで亡くなった、医療が行き届かず亡くなった人も増えた、この大使一家のようにアメリカに亡命した知識人や富裕層がいなくなった。 いろいろ理由はあるものの、これだけ平均年齢が若いというのは大きなチャンスであるとともに、知識や熟練をどう伝えるかが大変な課題であろう。 

 いまイラクに必要なのは、電気、通信、水のインフラ。 そして教育と医療。 ただそれさえ整えば地力のある国民であり、かつ石油の埋蔵量によって急激な成長を遂げる可能性がある。 課題はテロを撲滅できるかどうかだろう。 事実、商売熱心な日本企業ですら、イラク進出はみな躊躇しているようである。 まずは治安の安定化。 アメリカの責任、それを支えた日本を始めとする各国の勤めでもあろう。