2019/01/14

サラリーマンは300万円で会社を買いなさい 三戸政和著

 ご自身がM&A、企業再生の専門家として財をなされているようで、具体的にKnow-Howも書かれており、この「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい」は面白い本である。一つのオプションとして大手企業に勤めるものは検討の余地はあるかも知れない。ただ、注意点としては、ご本人が2018年現在40歳になるかなられないかの年齢であり、人生100年を前提に書かれている。この2018年においては、健康年齢は72歳程度で、私(現在60歳)の場合に計算すると76歳程度に伸びているとしても、18年しかない。本書では、著者は60代は購入した会社を運営して70歳程度までやって、売るか、次に託すかすれば良い、としているが、いま40歳以下の人であればまだしも、現実には事業承継目的で売りに出ている会社を60歳を過ぎて買って、それなりに努力して残りの健康年齢を投げ打って会社存続に駆け回る価値が見いだせるか、あるいは特に何もしなくても左団扇で経営できる会社が安く手に入るか、という基本的な疑問が残る。
 ただ、著者曰く、ベンチャーには手を出すな、飲食産業には手を出すな、など、「そうだよねー」と思うところも多く、やるかどうかは別として読むのは面白い。

 M&A仲介業者として下記が紹介されている。
日本M&Aセンター
M&Aキャピタルパートナーズ
ストライク (SMARTというSITEを運営)
いづれも東証一部上場。
(私の若い頃と比べると、知らない会社が随分増えた)
他にはTRANBIというMatchingサイトも手数料が安価。

公共サービスとしては事業引継ぎセンターが設置されている。

会社の買収について事前のチェックポイントとして;
簿外負債はないか。
資産は実体価格を反映しているか。
回収できない不良債権、売掛金はないか。
在庫は帳簿通りにあるか。実体価格か。
土地建物、賃貸物件、パテントなどは担保になっていないか。
法令違反、不正会計はないか。
係争中の事案はないか。
クライアントとの関係は良好か。
仕入先との関係は良好か。
金融機関との関係は良好か。
従業員との関係は良好か。
従業員に残業代等を払っているか。未払いはないか。
社会保険制度には入っているか。
....いづれも専門家のサポートが必要になる。
ただしこれには費用もかかるし、本当の実態が分からないことも多い。

お勧めとして面白いと思うのは、その会社を購入する前提で契約はするものの、例えば2年間、引継ぎとして専務などの待遇で入社し、その中で人間関係や企業としての価値を理解していく。
この間に、話と違うことがあれば解約できるようにしておくこと、また同社が契約している税理士や弁護士は、自分の信頼する人たちに変えてもらう。かつ現社長と人間関係を築き、引継ぎをしてもらう。・・・これはかなりリスクマネジメントとしては有用な方法だと思う。

いづれにしても、リスクフリーという訳には行かず、あくまで失っても良い余裕資金で行うべき。

他にも、購入相場は営業利益の3倍くらい、株を売るときは営業利益の5倍くらいとか、購入するお金は買おうとする企業を担保として借りるとか(要するに身銭を払う必要がない)、企業承継の場合は個人保証を求められない制度(経営承継円滑化法)があるとか、知らない事がかなり多く面白かった。

ただし、株と一緒で、あくまで自己責任。かつ、会社の経営はそんな生易しいものではないことは肝に銘じる必要がある。


以上