2019/10/06

会社成長のカギは外国人材の活用だ! 双葉社

グローバル人材キャリア支援協会編による一冊。
2019年現在から20年先を見通すと日本の労働人口は圧倒的に足りなくなる。
これは厚労省や総務省などの統計上、必ず起こることであり、会社や団体に限らず、日本に住む全ての人はこのことを認識して、いまから準備しなければならない。
社会保険は足りなくなり、社会を回すための人材が圧倒的に不足する。従来当たり前と言われていたような電車に乗り、通勤する、就学する、スーパーで買い物をする、病院で診察を受ける・・・そんな普通の生活ができなくなる可能性が出てくる。
王道の解決方法は、日本人一人一人の労働効率を向上させる事である。ただし、この20から30年で、一人当たりのGDP(つまり収入、あるいは生産効率)を倍にしなければ、いまの社会基盤を維持することは難しい。無理とは言わないが、かなりチャレンジングだと言わざるを得ない。これは日本の歴史を遡っても、最大の国難のひとつと言えよう。
解決方法のひとつとして有力なのは、移民の受け入れ。すでに国は「移民」という言葉は使っていないものの、「高度人材の受け入れ」という表現で、日本に海外から労働力を補充しようとしている。この本はこの解決方法をよりフォーカスして書かれている。

メディアによると、海外で就職したい国のラインキングで30位程度を低迷しているのが日本である。その点では「外国人材を受け入れてあげる」では無くて「外国人材を求めに行く」という時代にすでに入っている。そういう外部環境の変化の中で、どう外国人材を自分たちの社会に受け入れ、夢を持ってもらい、活躍してもらえるか、というwin-winの状況に持っていかないと行けないのが、いまの日本の課題である。

外国人材受入の基本3ポイント
  1. 文化の違いを認める、楽しむ
  2. フィードバックを与える、受ける
  3. 将来を見せる、ビジョンを描かせる
が挙げられている。幸運なことに私はいままで、約30カ国の人々と一緒に働いてきた。彼らのマネジメントの下で働くこともあったし、マネジメントしたことも、もちろん同僚として、チームとして働くことも多くあった。そこで重要なのは気づきは文化の違いによる誤解を乗り越えて、認め合い、違いを楽しむことがいかに大切かということだった。

唐突だが、日本語というのは非常に曖昧な言語である。阿吽の呼吸が通じる。忖度が通じる。「まあ、うまくやってくれよ」という何を求めているのかわからない上司の指示が、指示として伝わる。これは日本人の間でしか通じない。外国人はそれがアジア人であろうと、欧米人であろうと、明確に、細かく、具体的に説明しないと分からない。

さらに、外国人を使い捨ての肉体労働要員として扱う、短期の補充要員として扱うこともとんでもない時代錯誤と言わざるを得ない。特に日本人はアジア人に対して下に見て、一方で西欧人に対しては劣等感をもつ傾向がある。これも考え方を全く改めた方が良い。
この数十年でアジア諸国の教育水準は非常に高くなり、私が同僚として働くアジア系の諸外国人の業務能力、言語能力、調整能力は素晴らしいもので、言語が壁になりやすい日本人でも互角に仕事をできる方はかなり少ないと言わざるを得ない。

私がたまに講師をする早稲田大学ビジネススクールには留学クラスがある。アジアを中心に欧米からの留学生も多いのだが、優秀である。また日本でそのまま就職したいという人も少なくない。ところが実際はその能力を評価されないのか、あるいは外国人アレルギーがあるのか、受け入れ準備がないのか、就職できずに日本を去るケースが多い。仮に就職しても、日本的な徒弟制度的な会社運営に魅力を感じずに辞めて行くケースがあとを絶たない。外国人も日本人も同じで、その会社での仕事に魅力を感じ、チームの中で働くことに楽しさを感じ、自分のキャリアプランを描けるビジョンを会社の中に見出さない限り長くは働いてもらえない。
この本ではこういうテーマを扱い、具体的に何を準備すれば良いかを丁寧に書いている。加えて具体的な事例を説明している。直接こういう外国人材と深く関わってきたからこそ書ける実話が数多く紹介されている。

これを書いている2019の秋に行われているラグビーW杯。日本チームは31名の代表中、15名は外国出身者である。帰化しているプレーヤーが多いとはいえ、一見すると世界選抜チームにも見える。日本人だけで、おなじ活躍ができたろうかと考えると、おそらく難しいだろうと思われる。文化や考え方の違いを受け入れる勇気、それこそが日本という国を再度強くすると信じている。