2013/06/29

固定費を上げない工夫とタイミング

 或る大手製造業のトップは経理畑出身。たたき上げで修羅場をくぐっている。
とにかく固定費を上げないようにしている。増員は認めない。それどころか退職者が出てポジションが空いているのにも関わらず、なかなか代わりの採用を承認しない。開発用の検査機が壊れても、なかなか交換を認めない。部下からすると困ったものである。売上の調子は最高、利益率最高、いまどき年々右上がりである。なのに、この引締め。・・・単なるケチなのではないか、自分のボーナスをもっと上げるためのパフォーマンスではないか?
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 先日読んだ稲盛和夫氏の本でも触れられていたが、生産能力が上がると言って高い装置を導入しても、それによって製造コストが上がってしまうとしたら何にもならない。古い機械をだましすかしして作る方が、コストは低いまま、かつ実際の生産量も上がることがよくある。最新鋭という言葉に惑わされてやたら投資するのは考えものだという一節があった。

 以前勤務していた会社でも20年ほど前に、猛烈に成長した時期があった。仕事も増えるので仕方なかったろうが人員を大きく増やした。それが10年ほど前から市況の変化もあって右下がりになる。本来は資産であるはずの巨大な人員が、逆に足かせになっていった。
 一度ネガティブスパイラルに入ると、成長のための投資をする余裕もなくなるものだ。あり金すべてをつぎ込んで買った馬券はそうそう当たらない。却って泥沼にはまっていく。

 ビジネスが順調な時ほど、設備投資に対する考え方が緩む。勝って兜の緒をしめよ。
お金の余裕があるからこそ、成長のための重要な投資もしっかりと考えてできる。成功の確率も上がる。 
 ケチと評判の、このトップの舵取りは案外まともなのかも知れない。

2013/06/22

社員の多い日本と少ないイギリス




 イギリス赴任中には年に一度程度日本に出張した。その際に思い出したように驚くのはオフィスで働く人の多さだった。日本の本社はメーカーであり、海外子会社のように販売に特化した「軽い」組織ではないので、人は多くならざるを得ない。しかしそこを割り引いても、イギリスの自分が働くオフィスと比較すると、人が多いと思わざるを得ない。
何故なら後年、日本の販売子会社に出向した際も、やはり人が多いと感じたからだ。

オフィス全景 イギリスで働いていた時は実に効率的だと感じた。それぞれの役割分担と責任がはっきりしている。だから調整機能が必要ないので管理部門が小さい。直接お金を稼ぐ、営業やそのサポート部門の人員比率が高い。人員は少ないにも関わらず、朝は9時前に出勤する人が多いが、退社は4時頃というひとも少なくない。効率がいいのである。

  営業部隊は自宅から車で顧客を回る人も多い。この人たちは顧客と価格交渉や販売数量を決め、関係を維持する役割。
本部には営業と連携して、見積や受発注、細かい確認を電話で顧客と行うサポート人員がいた。役割分担が明確だった。もともと「個」を大切にする文化があるので、責任分担を明確にしておかないと、チームとしてうまく動かないからだろうと考えている。

 それと比べると日本の場合は、ある種民主的というか、集団を大切にする。だから「調整」というものに労力をかける。よって管理部門が大きくなる。そうすると社員が増えるので、ますます調整が必要になる。

 いいこともある。イギリスだと、役割分担がオーバーラップしておらずきちんと整理されているため、どこの組織にも責任を定義されていない仕事が降ってくると店ざらしになる。日本だと、何やかや言いながらも、誰かがやってくれる。ただし、それは全社的に考えると全体最適にならない、余計なことをしているのかも知れない。

 単純にどちらがいいと言い難いが、2013年、これから一人当たりGDPを上げなければ経済規模を維持できない日本は、イギリスやヨーロッパの効率の良いところは学んだ方がいい。