2009/02/22

アルゴリズムって何?


 あるアナログ世代の方にアルゴリズムって何だと聞かれた。 こちらもアナログ世代なので答える資格も無く、いろいろな本で調べてみた。 そのなかで一番フィットしたのは;

「問題を解決する手順」

・・というもの。
 
 例として10と15の最大公約数は何かという命題があるとする。 たぶん5だ、と大抵の人は判る。ではなぜそう判るのか。 勘で判ってしまうように思う。 つきつめて考えると10は、5と2で割れる。 15は5と3で割れる。 であれば5だ・・。 となる。 ではなぜ10を5と2で割るのか。 このままだとアルゴリズムにならない。 
 アルゴリズムにするにはコンピューターにも判るような、くどい説明をしてやる必要がある。 例えば、10を9以下の数字でそれぞれ割って、割り切れる解(整数)が出てきたらそれをリストアップしておき、それとは別に15を同様に14以下の数字で割った整数を出し、それを10について算出した整数とあわせて、同じ数字をピックアップし、さらにそれを比較して一番大きな数字を見つける。 ・・・というように、コンピューターに判る手順を作るのがアルゴリズムである。 
 ちなみい良いアルゴリズムとは、計算手順が少なくて済むもの。 上記の例ならば、10を9以下で全部割るよりも、どうせ2分の1より大きな数字で割っても意味がないのだから、10÷2以下の数字で割るようにすれば計算回数が半分で済む。 それが良いアルゴリズムとなる。
これなら簡単で判りやすい。

8対2 パレートの法則


パレートの法則とは何で、どう仕事に使うものか。
最近になって知ったがパレートという人はイタリアの技術者だが、数学、経済、哲学、自由運動にも身を投じた多才なる人物だそうだ。彼は、数理経済学の実証的な手法(統計分析)を用いて、経済社会における富の偏在(所得分布の不均衡)を明らかにした。これはパレートの法則とよばれている。この法則は、2割の高額所得者のもとに社会全体の8割の富が集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に配分されるというものである。これは商品や顧客とその売上にも使える。何にでも当てはまる不思議な法則だ。




不完全性定理 ゲーデル


 コンピューターは人間を越えるのか、という点で期待と不安を子供のときから持っていたが、最近読んだコンピュータ入門本にその解があった。 ゲーデルの不完全性定理と呼ばれるもので、「計算不能の関数は、可能な関数よりも多い。 コンピュータは計算可能な関数しか扱えないところに限界がある」ということが判った。 この定理は論理学、哲学にも入っていく、相当深いものでとても私には正確に理解できない。 が、おそらく「自分自身の矛盾を数学では証明できない。」ということで、ひらたく言うと「数学で証明できないことがある。」と言っているように思える。 特にある次元の問題を解くにはひとつ上の次元から俯瞰しないと解けない。 これは曲解かも知れないが、「数学で商売は測れない。」と受け取れば、MBAで学んだ数学的に全てを評価する手法だけでビジネスを語ると飛んでもないことになる・・と言えないだろうか。

 ゲーデルはチェコ出身の数学者。 中央ヨーロッパは数学者や物理学者などに業績を残す天才の産地のようだ。 

2009/02/19

イラク戦争に見る破壊の恐怖と人間の強さ


 先週横浜市が主催する国際交流セミナーに参加して、駐日イラク大使の短い講演を聴いた。 イラクの歴史から先の戦争と現在を語るものだった。 聖書に出てくるサマリア人とはシュメール人の事だったかと、英語と日本語を交えたブレゼン資料を見ながら一つ賢くなった。

 戦争による街の破壊と殺戮は嫌というほど報道されている。 話の中で驚いたのは湾岸戦争以降の経済封鎖や戦争によって、貨幣の購買力が一万分の一になったこと。  大学の教授などは生きるために本を道端で売ったそうだ。 中流階級は壊滅的な打撃を受けたとのこと。 世界第三位の石油埋蔵量を持つこの国はもともと大変豊か。 貨幣購買力は世界トップクラスだった。 ブルネイのようなものだったのだろう。 戦争というのは破壊である。 自分の資産がある日突然一万分の一になって果たして生きていけるか、生きる気力が残るだろうかと思う。 それでも大多数の人々は生き残り、生き続けようとするところが人間の強さだ。

 いまのイラクで最も多い年齢層が19歳というのも驚く。 戦いで亡くなった、医療が行き届かず亡くなった人も増えた、この大使一家のようにアメリカに亡命した知識人や富裕層がいなくなった。 いろいろ理由はあるものの、これだけ平均年齢が若いというのは大きなチャンスであるとともに、知識や熟練をどう伝えるかが大変な課題であろう。 

 いまイラクに必要なのは、電気、通信、水のインフラ。 そして教育と医療。 ただそれさえ整えば地力のある国民であり、かつ石油の埋蔵量によって急激な成長を遂げる可能性がある。 課題はテロを撲滅できるかどうかだろう。 事実、商売熱心な日本企業ですら、イラク進出はみな躊躇しているようである。 まずは治安の安定化。 アメリカの責任、それを支えた日本を始めとする各国の勤めでもあろう。

2009/02/11

モチベーションを測る12の質問

 「まずルールを破れ!」 (First break all the rules) というギャラップが調査した報告を元に書かれた良きマネジメントになるための本がある。 題名や触れ込みを見た段階では、また有り触れたマニュアル本かと思ったが、意外に人間や組織の本質を突いていて考えさせられることの多い本だった。 この本の内容はまた別の機会に書いておく。 ここでは、この本に取り上げられていた、モチベーションを測る12の質問を列記したい。 ギャラップが調査をした際に実際にこの質問への回答数が多い人と、成績も良く前向きに働いている人の相関関係があったという。


BASE CAMP
1.自分に何を要求されているか判っているか(業績・定着率)
2.達成の為の道具は揃っているか(業・定)
貢献度
3.毎日最高の仕事をするチャンスは与えられているか(業・定)
 4. この一週間で誉められたか(業)
5.上司・仲間は一人の人間として認めてくれるか(業・定)
6.自分の成長を後押ししてくれている人はいるか(業)
同朋感
7.自分の意見は尊重されているか(定)
8.会社のミッションに比して自分の仕事は重要か
9.仲間は高いクオリティの仕事をしているか
10.仲間に親友はいるか
全員の成長
11.6ヶ月以内に自分の進捗を誰かと話したか
12.仕事上学習し、成長する機会を得たか

 12も覚えられないのだが、最初の2つでも十分だろう。 
何をするか判っているかどうか。 またそれを達成するための環境は整備され、与えられているかどうか。 部下だけではなく、自分のモチベーションを測るときにも有効で、経験的にも納得できる。 そういえばフッと仕事が暇になってしまったときに自分を見失うようなことがある。 また、これをやらねばと勇んでいるのに結局周りがそれを支えてくれないという経験もあった。 この2つは基本的なだけに最も重要だろう。 敢えてもう一つ選ぶなら、私は「誉められたか」に一票。 残念ながらいまの年齢に達すると、人は簡単に自分を誉めてくれないが、若いころは良く誉めてもらってそれが自信につながった。
別な「一分間マネージャー」という本に面白い例えを見つけた。 サッカーはルールを教えればあとは楽しむだけ。 ゴールしたら思いっきり喜ぶ、称え合う。 当然と思われるこの状況はそのまま仕事でも同じことが言える。 何をすべきかはルールを教えること。 達成するための用意は、サッカーボールと一緒にプレーするチーム。 誉めるのは、喜ぶことによって、これが上手くいったということだと実感し、こうすれば上手くいくのだというフィードバックによる学習になる。 常に覚えておきたいことだ。

脳を冴えさせる15の習慣


 築山節(つきやま たかし)さんという医者が書いた本である。 
最近、忘れっぽくなり、まともに本も読まなくなって、だんだんボケが始まっているかと心配になった。 去年義理の母が遊んでいた任天堂のDSを購入して「脳トレ」を購入したものの、すぐに飽きてしまう。 あれは楽しめても頭の訓練にはあまり役に立たない。 この本に書かれているのは判りやすく、改めて人間の脳というものに興味を持てた。 
下記はそのエッセンス。 難しいことではない。 確かにこういう当たり前のことをちゃんとやっている人はボケることなく長生きしているようなイメージが私の中にある。

1)午前中に面倒なことをする。
  足、手、口を使ってウォームアップ

2)試験を受けている状態を作る。
  何時までにやる、これをレポートにする、という目的意識

3)ちゃんと寝て睡眠中の整理を利用
  寝る前に大まかに考えて翌朝にアイデアがわく

4)家事は脳トレ 雑用は大事

5)問題解決にはルールと行動予定が大事
  書類整理、名刺管理などのルールを作る
  書いて解決方法を考える
  空で考えても7つ以上は覚えられない

6)机の整理、身の回りの整理は頭の整理に通じる

7)テレビを見過ぎない 目を動かしていろいろな情報を取る
  ラジオは創造性にプラス

8)記憶力は入力→処理→出力のループ
  日記、ブログ、まとめ、報告書を書く

9)話す能力強化
  メモ、写真を見ながら話を長くする

10)たとえ話が出来るようにする

11)腹八分目

12)脳検診を受ける

13)失敗ノートを作る
  小さな失敗、人から言われた失敗を分析

14)ひらめきは余計な情報から生まれる

15)意欲を高めるには
  人を好意的に評価する、時にはだめな自分も見せる、
  それが自分の評価にもいい影響

 つまり、普通に、豆に、継続的に生きていきなさいということ。 横着をせずに、面倒がらずに、これも健康のためと思って家事や仕事をしましょう・・・ということ。 これもまた人生訓だ。

2009/02/04

戦略と戦術の違いは・・・

 GOALの著者Dr. Goldratが会社に講演に来たのでこんな機会は滅多にないと聴きに行った。
その際に彼は「戦略と戦術の違いを一言で表現するとどうなるか」と聴衆に問いかけた。 
一瞬考えたのだが結局一言では難しい。

彼の答えは;

Tactics is What
Strategy is Why

なるほど。

2009/02/03

行政の苦手なこと -地域医療のセミナーから

 先週、都内のK大学で地域医療に関するセミナーが開催された。
いまの医療現場の大変な状況を知ると共に、医療関係者だけで解決しようとしても限界があるなあ、というのが感想。
 そのセミナーの中で、講師が質問に答えるなかでつかったフレーズが記憶に残った。
医療はその地域の人々と連携していかないと強化できない・・という前段で、「行政は、公平性を基準に活動します。その地域の連携を行政がやろうとすると、この人を呼ぶならあの人も呼ばないとマズイ、この団体に声を掛ける以上、あの団体にも声掛けしないと後でクレームになる。 行政は地域を纏め上げるということが苦手です。」と話をしていた。
 成る程行政は「公平」「機会均等」というところに目が行く。勿論本音と建前を使い分けるのも行政ではあるが、少なくとも公的な活動をするときには公平という建前を前面に出す。「そうしないと後で問題になるよ。」ということだろう。 ちなみに同講師によると、NGOであるとか、地域のカリスマ的指導者がその地域を纏め上げるのが実態だそうだ。
 苦手なことを行政にやらせようとしても無駄だろう。

GOAL! TOC理論について



 社会人になってから何冊も読んだビジネス書の中でもベスト3に入るのが、このDr. Goldratの書いた「ゴール」だった。 大変気に入ったため、欧州、中国の赴任時代にスタッフに配ったことがある。 サプライチェーンマネジメント、というか、生産現場での工程管理によってどう生産高を上げ、在庫を減らすかを解いたのがTOC (Theory of Constrain 制約理論)である。
 超簡単に言えば、「遠足に行った幼稚園児がみんな手をつないで歩いている。 早く目的地に着くにはどうすればいいか。」という命題に応えるのがTOC理論だ。 この「ゴール」という本が日本で出版されてから、TOC理論は注目されて、その後多くの研究者と出版が増えた。 私が読んだのは2001年頃だったと思う。
 ビジネス書というよりも単なる読み物としても楽しめる。 主人公のさえない工場長が、絶え間のない工夫を続けるうちに大きな成果を出すという物語。 思考の最初のきっかけは大学時代の恩師に偶然空港で会って、そこで自身の自慢に「今度工場に新しい機械を入れたんです。 処理スピードが格段に上がりました。」と言う話をする。 するとその恩師が「それで・・売上は上がったのかね?」と聞く。 主人公は一瞬何を聞かれたのか判らず絶句する・・というもの。

 先ほどの遠足を例に説明を続ける。 早く目的地につくためには、早く歩かないといけない。 しかもみんなで。 歩調を併せて歩く必要がある。 誰の歩調に合わせるか? 一番遅い人の歩調に合わせることがいい。 そうしないと、みんな手をつないだまま倒れこんでしまう。 
 工場のラインもまったく同じで、ある工程が猛烈に速く作業しても、その工程の後に半完成品が山と積まれてしまう。 またその前の工程では組み立てる部品が追いつかないのでなくなってしまう。 つまりその工程に1億円の最新鋭ロボットを設置していたとしても、その能力自体が無駄になっている可能性が高い、ということである。 ではどうするかというと、一番遅い工程がどこか見出してあげて、そこを強化する。 前後の工程はそれに合わせて作業スピードや部品供給を行うべき、というのがこの理論である。 

 この考え方は実は製造管理以外にもいろいろな作業や、経営やマーケティングのあり方にも適用できると思っている。 グループで仕事をするのは、それがたとえ営業や、マーケティングであっても共同作業である以上、歩調を合わせる必要がある。 
 言い換えると、部分最適で考えるのではなくて、全体最適で考えるべきだ・・ということである。 どこか一部分をいきなり良くしても、全体が変わるように良くしないと別な問題が出ますよという警鐘でもある。
勉強するとまだまだ深い理論であり、面白い。



 

ゲーム理論 : 戦略的思考とは何か?


 いまでこそアマゾンで「ゲーム理論」で検索すると1,000件以上の本が出てくるが、この本は1991年の刊行というからゲーム理論をビジネス向けに紹介した本としてはかなり初期だと思われる。当時役員のスタッフ部門に居たことから自分には不相応なこの題名の本を手に取った。数学的思考が不得手な私には難解この上ない本だったが、それでも知的好奇心を刺激された非常にいい本である。

 身近な例を多用してそれぞれにゲーム理論的な解説を試みるのだが、基本的な考えの説明として「囚人のジレンマ」と言う有名な事例から書き始める。





 囚人ABが居て、それぞれ裁判に掛けられるが相棒を裏切って告発すると自分の刑は軽くなり、相棒は極刑となる。双方が黙秘を決め込むと証拠が弱くなるので双方の刑は軽くなり、逆に双方ともに相手を裏切れば重罪になる。前提として囚人同士は連絡を取り合えないとすると、囚人たちはどういう行動を取るだろうか。その場合、通常自分自身の保身を最優先として考えると相棒を裏切るのが一番いい。ところが双方がその行動を取れば結局重罪になってしまう。 

私は大学時代のサミュエルソン経済学で習った「構造の誤謬」を思い出す。自分のことを考えて消費せずに貯金をする。世の中の人が全てそうすると消費が冷え込み、景気が悪くなる。それと同じパラドックスが生まれる。

ただ面白いのが、現実にはこのゲームを変えることが出来ること。まず囚人はあらゆる手を使って相棒と連絡を取るだろう。すると協調できるかも知れない。あるいは仮病を使って公判時期をずらそうとするかも知れない。そうすると相棒がどういう手を取るか判る。 つまり競争相手との利得をこの表の中で想定し、時間、場所、情報などのルールを変えることにより結果を変えられる、ということである。 つまり自分と相手との利得をどうすれば最大にすることが出来るか、を追求している。そして協調を有効に利用せず、自己の利益のみ追求すれば、破滅的な結果になる、という結論を導き出す。またゲームの「場」や「ルール」を変えることによって逆転することも教える。数学的に言えば係数を変えてしまうことで関数の解を変えてしまうということだろう。国と国の駆け引き、ビジネス上の駆け引きにも応用できる、と学者が考える所以である。 実際アメリカの大学ではこのゲーム理論を実践的に教え込んでおり、外交交渉や企業のM&Aなどに利用している。日本人の交渉術が真っ正直なことを考えると、ちょっと恐ろしい。
 

 この理論を普段の生活に役立てるというのはなかなか難しく、この本の続編でも筆者がタクシー運転手を相手にゲーム理論による挑戦を試みるが大失敗に終わるというエピソードはほほえましいのと同時に、理論を現実に応用することの難しさも示唆している。もっとも最近は「ゲーム理論トレーニング」などという本が実践問題を解きながら習得する仕組を提供している。まだ全部読み終わっていないが(というかかれこれ数年たな晒し)、より深く考えてみるのにいいと思われる。

 いろいろゲーム理論を読んだ中でいくつかのフレーズが記憶に残る。
■「ゲーム理論とは強いものが勝ち続けることを証明した理論だ。」これは数学的にその通りである。80:20理論(パレートの法則)や、ランチェスター戦略も突き詰めれば同じ結論を導き出す。このフレーズの著者は、これに気付くと救われない気持ちになる、というニュアンスを述べていた。庶民の私もそう思う部分が多いのだが、長い歴史の中では盛者必衰であるように、人間は必ずしも合理的な行動は取らないので、勝者と弱者は常に入れ替わっている。

■「一度目の裏切りは許し、二度目の裏切りには徹底的に反撃せよ。」これは実際のゲームを何度も繰り返す中で、最も利得の高い組み合わせを探す結果導き出された経験則である。その後数学的にも実証されていたと記憶する。このフレーズは結構好きで、人生則にも相通ずるものがある。同時にアメリカの軍事戦略もこれなのだろうと9.11以降のアフガン戦争、イラク戦争を見て思った。現実はもっと複雑な要因が絡んでおり、巧く行かなかったどころか、世界不況の伏線となったのは誰もが知るところだが。