2019/05/06

ビジネス・ディベート 茂木秀昭著

ビジネス・ディベート」著者の茂木先生には私が代表を務める企業に研修に来ていただいたことがある。
この本を読んで、大変判りやすい入門編になっていることと、先生の主張に激しく共感したからでもある。
もともとイギリスの大学などではディベートによる討論会が多く、
授業でもあり、ゲームという試合でもある。まだイギリス議会での党首討論で「Mr. Speaker, xx」から始まるフレーズを聞いたことのある人も多いだろう。少なくとも欧米、さらに近年では中国などでもディベートを教育に早くから取り入れており、日本でも近々授業に取り入れられると聞いている。日本にとってとても良いことである。

ディベートとは論理的な思考力やコミュニケーション力を高め、ビジネスに生かすスキルの一つと言える。日本ではディベートを「相手を言い負かすための道具」という誤解があるが、本来はある命題をめぐり、議論を建設的に発展させるための手法だ。
特に日本では、和の精神を尊ぶよき文化があるが、どうもディベートではこれが負に出てしまうようで、論点がずれて感情的になってしまうことが多い。
討論するべき議題を自分自身の問題と切り離せず、自分を攻撃されてしまうと感じてしまうのだろう。

しっかりとディベートを経験すると、社会において、プレゼン、企画書作成、会議、交渉などのシーンで利用できる。本書はその準備、ルール、手法をわかりやすく開設している。

私自身の経験を二つ。

  • ドイツ系企業で働いていたときに2度に亘ってアジアパシフィック地域の社員が集まって研修を受けたことがある。これが面白かった。一応英語は得意と少なくとも自分では思っているので外資系にいるのだが、インド、パキスタンをはじめ、アジア諸国の人たちは自己主張が強烈に激しい。意見を言い始めると講師が止めるまで止まらない。私の意見を言いたくても、さすがに相手の発言を遮ってまで話すのは気が引けるので、無口になってしまった。(日本人だなと自分でも思う)
    そのときに痛感したのが、一応「英語は使えます」レベルの私でも入っていくことの難しさを体験する中で、一般の日本人はこの中に入ってリーダシップを発揮できる人はどのくらい居るのだろうという素朴な疑問と危機感だった。
    彼らの議論に割り込み、与えられる時間は非常に短く、その中で、簡潔に論理的に自分の意見を述べ、議論に方向性を与えることができるようにならないと、日本人はなかなか世界の中で活躍できないのではないだろうか、そう強く思った。
  • この著作からは離れるが社会人ESSが主催した日本人だけの英語ディベートに参加した際に説明を受けたのは、AREAという言葉だった。これが非常に覚えやすい。
    Assert(主張)、Reason(理由)、Example(例)、Assert(主張)
    これは一分間スピーチにも、いろいろな場面で共通しているロジック構築で、私もA4の紙に印刷して、自分のオフィスの壁に貼り付けてある。
    まず、自分の意見を述べる(Assertは断言するというニュアンスで、切れ味するどく簡潔に判りやすく主張するということ)。
    次に、何故その主張になるかの理由を述べる。ここも大事で、論理的(誰にでもわかりやすい)でなければならない。さらにその理由をサポートするために例を挙げる。
    これもその例が本当に理由を肉付けするために妥当かどうか確認をしておく。
    そして最後に再度主張を繰り返す。ダメ押しである。
先生の著作は何冊かあるが、日本人は社会人になっても週に一度、それが無理なら月に一度でもディベートすると良い。
蛇足だが私の専属のディベート先生は妻である。30年以上、負け続けており、圧勝できたことはいまだ一度もない。
いつか気持ちよく勝ちたいものだ。
「繰り返すがディベートは勝ち負けを競うものではない」