2019/05/05

日本は経済から再起動する フォーラム21 梅下村塾31期生

仕事上お付き合いされた方がこのフォーラム21に会社派遣で参加されており、この「日本は経済から再起動する」を読ませていただいた。
恥ずかしながらフォーラム21の存在を知らなかったのだが、日本を代表する大企業のトップの肝いりで優秀な企業の中堅幹部を企業横断の形で毎年40名前後集め、日本の将来を議論し、広く政財官にヒアリングを行い、さらに議論をし尽くして形のあるものにまとめる活動(将来を嘱望される人材の育成研修)、とのこと。

驚かされるのは、既に31年目とは言え、40名ものバックグラウンドや考え方の違う皆さんが一年を通して調査や議論を続け、最後に提言として一冊の本に纏め上げたことで、これ自体に強いコミットメントを感じる。また、世代的には段階ジュニアに当たる方々が中心のようで、私からするとおそらく一回り下の世代なのだろうが、現在の日本に対する危機意識を強く持たれていることに頼もしさを感じる。

構成としては、現状の整理。そして、29の提言を挙げている。
大きく分けると;
デジタライゼーション~データ×ルール×日本の強み~
企業・産業の新陳代謝~劣後を許す、すべての壁をぶち壊す~
イノベーション~人づくりと場の提供~
雇用改革~再チャレンジ可能な流動化社会を~
労働人口減少対策と社会保障対策

私の意を得たりと思う中項目をさらに挙げさせてもらうと、若手経営者の戦略的育成、大企業初ベンチャー、業法の改革、子供の頃からの経済教育、研究者に金を回す、他社出身者の管理職登用、定年制・解雇制度の見直し、外国人材の登用・活用、社会保険見直し、医療を海外へのビジネスに等々、さすがに40名で考えれただけあって現在の社会問題への解決案が網羅されている。

フォーラムでは中堅官僚などとも情報交換しているとのことで、このフォーラム参加者以外にも、いわゆる団塊ジュニア世代は、既に腹案を持ち、それを実行できるための権限を与えられるのをいまかいまかと待っているようにも思われる。
それに待ったを掛けるとすると、政治だろう。いま、若い人ほど選挙への投票率が低く、老人になるほどに高い。高齢化社会を迎えて、年金暮らし(あるいはその予備軍の私も含めて)になるとどうしても現状の維持、既得権の維持、自らの生活を守ろうとする意思が働き、長くても4年しかない衆議院議員らに無言の圧力が掛かる。
経済学で言う「合成の誤謬」である。ミクロ視点の自分の利益を図ると、マクロ視点の社会全体では意図しない結果が生じる。

重要なのは30年後、50年後、日本がどうなっているのか、政治家、企業家、世に影響を与えられる知識人が、間違いなく起こる現実を正直に語り、処方箋を示し、助け合う、努力しあう、そんな土壌を作ることだと思う。国民的な合意形成への努力は我々や若い世代の、50年後、100年後の日本人に対する大きな責務だろう。

処方箋はもうあるのではないか。そのカードを切るタイミングにあまり猶予はないと危機感を覚えると共に、その処方箋を理解しあう世代が育っていくことに期待を持たせてくれる一冊。