2019/05/05

論理トレーニング 野矢茂樹著

 東大教授の野矢茂樹氏の論理トレーニングという本を読んでいる。
なかなか面白い。教養課程の大学生向けの本だそうだが、こういう授業をまじめに受けていると社会に出ても役立つだろう。30数年遅かった。
言葉というものは使い方によって恐ろしいほどのパワーを持つことがわかる。
その内容は別の機会に譲るとして、冒頭に氏が興味深いことを書いているので引用する。

 「思考は、けっきょくのところ最後はひらめき(飛躍)に行き着く。思考の本質は飛躍と自由にあり、そしてそれは論理の役目ではない。」

 「論理は、むしろひらめきによって得た結論を、まだその結論に達していない人々に向かって説明するための道具である。」


 またこうも続ける。
 「ここで重要なのは、その結論にたどり着いた実際の筋道ではない。」
「どういう前提から、どういう理由で、どのような結論が導けるのか。そしてそれ以外の結論はどうして導けそうにないのか。それらを論理的に再構築して説明する。」

 論理を少しずつ学びながらも、むしろ改めて認識するのは「飛躍」が大切ということだった。
左脳(閃き)と右脳(論理)をバランス良く動かしていかないと、「閃きを実現」していくことは難しいのだと。自分に置き換えると、もともとひらめき方だったのに、大きな会社に入社して、論理の重要さを叩き込まれ、ひらめきを押しつぶしていたように強く感じる。そうか、そういう事だったか。遠回りしても、それに気づくのに遅すぎることはないと思いたい。

この本は、すべての理系の学問の根本に物理学、あるいは数学があるように、論理学というものは理系・文系を問わずすべてに通じる根幹だということを教えてくれる。社会人としても、プレゼンテーション、ディベート、コンサルティング、事業計画、さまざまな分野において基本の「き」を教えてくれる、そんな良書である。
なお、一人で自己学習するうえでは、論理トレーニング101題という本も出されている。これもおすすめである。