2011/07/23

近所の開業医


 中学のにきび坊主のころからよく鼻にできものが出来る。 最初少しピンク色になり、さわると微妙に痛い。 それがぷーっと赤く膨れ始め、熱を持つ。 不思議に出張しているときに出来ることが多いので、出張には薬を持っていくのだがなかなか効かない。 昨日欧州出張から赤い鼻で帰国して、週末を過ごす。 土曜日の今日であれば皮膚科も開いているので、台風一過の少し涼しくなった街の中を、買い物袋を提げてとぼとぼと出かけた。

いま住むマンションはバブルの頂点で買ってしまい、売るに売れないどうしようもない代物なのだが、場所が便利なことが取り柄だ。 老人になると近所に病院が多いことが大切と効く。 最近アレコレと病院にいくことが多いので、老いた時の気持ちが良くわかる。 有難いことに自宅から1キロ以内に歯医者は10軒、内科は5軒、耳鼻科、整形外科、皮膚科、眼科、肛門科、泌尿器科、婦人科となんでもござれだ。 この付近は年寄りが多いので需要もあるのだろう。

その皮膚科医院には5年振りに行った。 受付を済ますと今月で病院を閉めると言われた。 1時間ほど待って、診察室に入ると、外で待っている患者の誰よりも病人とはっきり判る院長がいた。 やせ細って昔のみる影も無い。胃がんだろうか。 使っていた塗り薬を見せて、症状を伝える。 「あんたが持っているその薬は湿疹用で、効かないよ。 どこで貰ったの?」 かすれた小さい声で聞かれた。 「関西に出張中に京都駅の前の総合病院で出してもらいました。」 「そんなの出すのは皮膚科じゃないよ。 薬はクラリスがいい。 あと塗り薬はダラシンがいい。 2週間分くらい出しとこう。」 そういいながら院長先生は少し考え事をして、「あんた、よくオデキは出てくるの?」と聞いた。 「はい、半年かそこらに大きいのが、小さいのだと3ヶ月に一回位出ます。」と答えると、「疲れると、出やすいね。 汗が出る季節もだめだ。 良く出張するのかい、それが良くないんだろうね。 ビタミン剤も出しておこう。 そうだ、ここはもう閉めるから、多めに出しておこう。」、そう言われて診察が終わった。

病院を出て、いきつけの薬局に行く。 この近辺には薬局が少なくとも5軒はある。 出された薬の量を見てびっくりした。 60日分出ている。 疲れると欠乏するということでビタミンB系の薬が二種類とクラリス120錠づつ。 手に乗せると、取り組みに勝ったお相撲さんの賞金袋くらいの大きさだった。 〆て4,600円。 ありがたいと思うべきか、少し迷う。 2-3年は保存できると薬剤師が言うので少し安心した。

つまらないことが気になるものだ。 そういえば、皮膚科医院の向かい側の内科は去年廃業した。 確か先生が病気になったと聞いた。 考えてみると、付近の開業医はほぼ全て私より年上だ。 病院があると安心と思っていても、医師だって歳をとる。 街も一緒に歳をとる。