- 地価動向
- 例えば秋田県の人口は2030年までに現在の半分以下になると想定されている。地価もそれに伴い、大幅に下がってくると考えられる。
- 3.11大震災以降の湾岸高層マンションは契約率が落ちると考えられていたが、2012年前半を見る限りは堅調である。これは耐震・耐火性などの性能や、ウォーターフロントが持つ独特のプレステージが評価されているからだろう。
- 首都圏の不動産はその観点からもまだまだ強い。アジア全体の不動産価格の25%を首都圏が占める。
- 地価は株式相場と相関関係がある。ピークはともに1990年。
2010年は最高価格の50%。 - 不動産業界(建設業、販売業、それに関連する資材産業)は寡占化が進まず、それに携わる企業数は多い。参入障壁が低く、地域分散型であることが背景にある。
- 国土交通省の「東証住宅価格指数」により過去からのトレンドは正確に読み取れる。
- 2020年は人口はより減少する。その結果として、関西地区の地価はダウン、中京はキープ、東京・神奈川は上昇。地方は一般的に大幅に減っていく。
- マンション
- マンションは全住宅の約10%程度の構成比率。全国で570万戸 (2012年)。
- リーマンショック後に在庫は一時12,000戸に膨らんだが、2009年末で7,000戸に調整されている。
- ただし、経済環境を見る限り、供給量は当面加速しない。
- 新築マンション着工数は2006年末がピークで、20万戸。2009年がボトムで、2011年は7万戸に回復。それでも2006年の半分以下。 <ここでも株式相場と連動している>
- 中古市場
- 国別の住宅代替期間。つまり建替サイクルは、日本が30年。仏・独は80年。アメリカ100年。イギリスは140年!
- 日本の住宅売買に占める中古物件の割合は13%。アメリカは78%。イギリスは90%!
- 日本には「穢れ(ケガレ)」を疎む精神環境がある。茶碗や箸に代表されるように、自分以外が使ったものの痕跡を物理的に全て消しても、精神的には汚れが残っていると考える。中古住宅を嫌い、新築を好むのが日本の特徴。
- 最近はリノベーションビジネスが拡大している。マンションなどは古くなっても住民の相当数が建替えに同意しないと実行できない。それであれば、古い戸建やマンションを購入し、それを改修、性能アップしてキャピタルゲインを得る。
読後感:
一種の情報誌なので、そのデータを見て何を思うかだろう。
少子高齢化で首都圏と言えども空き家が増え、社会問題化しつつある。首都圏の不動産はまだ上がるというのが本当なのかはにわかに信じがたいものがあるものの、地方の過疎化がより進むことは否定できない。その移動先は首都圏であり、特に東京、神奈川が中心となり、特に新規物件については今後もあまり値が下がらないことは想像できる。ただし中古物件などはどうだろうか。
これらのデータとは別に、文化論的に面白かったのは、イギリスの中古物件流通量の多さとの対比。住んでいたから実感できる。アメリカもかなり多いのは意外。仏・独が案外中古物件が英米より少ないのも意外。また、日本人の新築好きを「穢れを忌む」性癖に求めるのは面白い分析で、新鮮だった。
追記(2021年3月):
読み返してみると船井総研のレポートは当たっていたと言うことになる。人口の流動による首都圏の土地・家屋への相対的需要の堅調さ。及び株価の上昇率。さらに経済政策が金融緩和に偏っていることから、低金利で行くところのなくなったお金が、金融市場、不動産市場に流れたという要因も大きい。コロナ禍において、東京都からの人口が僅かに流出する、という珍しい現象があったが、今後もマクロ的には首都圏の価格は安定していくように思われる。