2010/06/13

日本の最大の貿易相手国はどこか。 円は本当に高いのか。

学生時代から30年近く、GNPや貿易統計に触れる機会はなく、世界における日本、あるいは日本のアジアにおけるポジショニングが大きく変わっているのにあまりにも無関心だった。先日(2010年)聴講した講演において寺島実郎氏が配った資料の中のデータを見て愕然とする。

*近隣諸国に対する日本円の円安化(2000年平均と2007年平均の比較)
中国人民元      19%*
シンガポール$   25.1%
韓国ウォン      32.9%
ロシア・ルーブル   20.4%
豪州$        57.9%
*対外貨に対して日本円が19%安くなっているということ

 残念ながら米ドルが出ていないのだが、2000年前半は105-6円だったのではないか。それが2010年で91円程度で推移している。明らかに円高である。これだけ日本経済が弱っているのになぜこんなに円が高いのか不思議でならなかったのだが、これも円の強さを米ドルだけで測っていたための誤解だろう。実際には日本周辺の国のなかで円は圧倒的に弱くなっている。ドルに対して強いのは、データの裏づけはないが金融的な投機の対象になっていて実勢を反映していないのではないか。
 次に、上述した経済力の「小さな」国々をいくら集めても、日米間の貿易額の巨大さと比較しても大した影響はないだろうという私の古い常識がいかに間違っているかを突きつけられるデータを挙げる。

*日本の貿易相手国シェアの推移
1990年 米国 27.4% 中国 3.5% 大中華圏* 13.7% 
2002年 米国 23.4% 中国 13.5% 大中華圏 24.9% 
2007年 米国 16.1% 中国 17.7% 大中華圏 27.8% 
2009年(12月) 米国 12.8% 中国20.5% 大中華圏 30.8%
  note * 香港、マカオ、シンガポールなど中国語を話す国家

 くどいが私のイメージでは米国は50%を超える貿易相手国である。それは30年前の話で、まず1990年の段階ですでに米国は約4分の1になっている。驚くべきは2002年からの中国語圏の膨張ぶりだ。まず同年に米国との貿易額を中国語を話す国家群の合計(以下大中華圏)で超える。さらに2007年に中国単独で、米国との貿易額を超える。そして直近のデータでは中国は米国の倍に迫り、大中華圏に至っては3倍に迫ろうかという勢いである。

この結果を見て、日本との貿易で中国は頑張っているねえなどと気楽に考えてはいけない。東アジアは日本というよりも世界に対して大変な影響力を持ちはじめている。

*2009年 世界港湾ラインキング (コンテナ取扱量)
1位シンガポール、2位上海、3位香港、4位深セン、5位釜山、
6位広州、7位ドバイ、8位ニンポウ、9位チンタオ、10位ロッテルダム、11位ハンブルグ、12位高雄・・・ 

ベストテンの何と7つの港が中国、または中華圏である。 
韓国も5位と12位と健闘している。
日本は20位以内にはひとつも出てこない。26位にようやく東京が、36位に横浜、39位名古屋。神戸に至っては44位である。
かつて世界最大の港であった横浜、神戸の順位がここまで落ちているという惨状を見るのはショックを通り越して呆然である。 

 無論貿易というものは双方に利益があるから起こるものであって、この数字だけをとって「中国の経済侵略」などと騒ぐのは愚の骨頂で、日本で作るより安いから周辺各国に作ってもらっている訳で、その利益を日本人は享受していることを忘れてはならない。100円ショップにあれだけの商品が陳列されているのはその判りやすい例だ。 
 ただこの10年間は後年経済史のターニングポイントと位置づけられるかも知れないほどの大きな変化が起きており、それは中国を中心とした新興国家の高度成長がもたらしたものだといえるだろう。では日本は同じ土俵で負けないように努力するべきなのか、それとも違う価値観を作り上げる事で国際競争力を上げていくべきなのか、すぐに解の出ない大きなテーマが目の前に横たわる。