2013/10/09

戦略思考トレーニング 鈴木貴博氏


ボストンコンサルティング出身の方の本はよく読むが、この「戦略思考トレーニング」は堅くなく、クイズ形式の軽い本。でも面白く、考えるための題材がいろいろ入っている。
研修講師などもここからアイデアを拾っているケースをたまに見かける。
  • コカコーラは何を入れて売っている?
    • スティーブジョブスがペプシのCEOだったジョンスカリーを"Do you want to sell sugar water for the rest of your life, or do you want to change the world?"と言って口説き落としたことを聞いて、コカコーラのトップが言ったのは、「われわれはdreamを入れて売っている。」
  • ハインツのケチャップはビンから出てこないので使いにくい。
    • そういう理由で、圧倒的なシェアがどんどん落ちていった。そこで打った広告が、「ハインツのケチャップは中身が濃いのでなかなか出てきません。」 それによって消費者のイメージが変わり、シェアが再び上がった。
  • ラーメンなんか知らない、カップめんなんぞ見たことのないアメリカ人に向けてカップヌードルをどう売り込んだか?
    • 「これはスープです。」 アメリカのスーパーではスープは売られていた。
  • 90年代終わりにベガというブランドの平面ブラウン管テレビが大ヒットした際に、ソニーのトップは何を言ったか?
    • 「これでウチのテレビ開発は15年遅れた。」先を見抜いた言葉だが、その対策は取れなかった。
  • かつての超高収益企業のインテルやマイクロソフトを引き合いに、基幹部品製造こそ高収益の秘密だ、とされていたのに対して、ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授は・・
    • 「性能が不十分」であることが高収益の鍵だ、と唱えた。HDDやメモリーメーカーは確かに高収益とは言えない。
  • IBMのプリンターの高級機種と普及機種は実は部品がまったく一緒だった。どこが違って値段に差をつけたか?
    • 「普及機種はソフトの制御によってプリント時間を遅くした。」 敢えて性能を下げて価格差をつけて、高級機種で利益を生もうとする戦術。
歯磨チューブの口を大きくして売り上げを大きくするとか、フィルムの枚数を増やして売り上げを増やすなどは有名な話。 内容によっては道義上どうなのか、と考える向きもあるだろうが、そういうビジネスの仕方を例示して、考えるのは楽しいこと。どういう戦略をとるかは最終的にはそれぞれの個人、会社が選んでいくもの。

2013/07/15

自国民を守る! 海外と日本の違い

 イギリスに住んでいるときに、さすがは元世界帝国と思えることが幾つかあった。その一つが世界の隅々で起こる事件にイギリス人が絡んでいることだった。ビジネスや学問、旅行はもとより、自分探しの放浪というのだろうか・・とにかくあちこちにいる。面白いのは旧植民地の移民もイギリス人なので、故郷に帰ると、例えば香港に居るBritish、つまりイギリス人ということになる。人種は関係ない。

 2000年前後と記憶する。インドのかなり山奥の固有文化を持つ地方で、親の決めた結婚を拒否して、実家に「監禁」されているBritishが居るということで大騒ぎになった。どう救出するかがメディアでも話題になり、軍事行動を起こして救出に向かうべきという議論が盛り上がった。結局、みずから逃げ出して帰ってきたと記憶している。
 最初このニュースを聞いても、全体の構図がよく分からなかったのだが、つまりインドの同地方出身の女性がイギリスに留学し、そのまま国籍を取ってBritishとなった、その後里帰りの際に親に地元での結婚を強要された、という話で、つまりアングロ=サクソン人ではなく、イギリス国籍を持った生粋のインド人女性なのだった。
 イギリス国家はBritishを保護することを強く求められている。実際に軍事行動を起こして救出に向かう事例は多い。欧州諸国の事情はよく知らないものの、おそらくこの姿勢は大きく変わらないと思っている。その際に、その自国民が何故そこに居たのかはあまり問題ではなく、そこに居るのが自国民であること自体が行動を起こす大きな動機になる。

 日本はどうだろうか。
 2004年にイラクで活動をしていたヨーロッパ各国、日本などのボランティアが誘拐され、人質になるという事件があった。「危ないのが分かっているところにわざわざ行くなんて、なんとハタ迷惑なことをするのか」。早く救出をするべきという反応よりも、自分で責任を取りなさい、という雰囲気だった。国際的な世間体を気にする内向き発想といえる。同じく人質となっていたフランスやイギリス人が自国に帰って大歓迎を受けたのと比べるとあまりにも違っていた。