2019/07/27

研修力強化 - NHK

NHKではアナウンサーなど向けにかなりの予算を掛けてその技能を強化している
その中で研修力強化研修というものがあり、参加してみた。講師は元アナウンサーで、研修を始めてすでに20年以上、NHK退社後も講師として呼ばれている年配の方。これがなかなか大したもので何処が悪いかたちどころに指摘し、参加者のプレゼン(講義)をたちどころに直してしまう。さすがNHKで、それぞれの参加者の発表をビデオにとり、それをみんなで観て、同講師がアドバイスする。午後に再度発表をさせてみると、初回よりも大きく改善している。ビックリである。

ここでは、同講師が自分自身でも使っているというインストラクションのチェックポイントを記録しておく。
  • 何を話すのか? <本番前>
    • 目的は何かを言えるか
    • 内容は研修の目的に沿って構成されているか
    • 興味、関心の持てる動機付けを準備できたか。
    • 最初に話す全体像は準備できたか。
    • 全体の構成は「項目」の形で整理されているか。
  • 何を話すのか?<本番にのぞんで>
    • ここでは「何を」分かって貰えばいいのか、確認しながら進めているか。
    • いま「全体」のどこを学んでいるのか、確認しながら進めているか。
    • この「項目」では何を学んでいるか、確認しながら進めているか。
    • 内容は目的に沿っているか。
    • 説明に具体性はあるか。
  • どう話すの? <本番にのぞんで>
    • 「音のことば」を意識して話しているか。
    • かまえず、「普段の話し言葉」で話しているか。
    • 心を開いて話しているか。
    • 声は聞き手に届いているか。
    • 短いセンテンスで話しているか。
    • 具体的に話しているか。
    • 強調したいところは意識して話しているか。
    • 聞き手を巻き込んでいるか。(聞いている人、聞いているつもりの人)
    • アイコンタクト、身振り、手振りを使い話しているか。
    • 情熱と自信を持って話しているか。
  • <役立つ言葉>
    • 結論から言うと・・
    • 一言でいうと・・
    • 要するに・・
    • つまり・・
    • 例えば・・
少し解説すると、「音の言葉」とは、声に出すと一瞬で消える、それを意識して発する言葉を大事に音にする・・そういう意味である。
また、遠くに届かせるためには、声を高く、近くには低くする。そういう音の特質を知る事も重要。

さて、私はどんな指摘をされたか。
全体として、間の取り方、音のトーン、落ち着いた態度など、ありがたくも講師の先生の趣味には合うということだった。ただし・・・があって、厳しく言われた指摘は、
  • 自分が大事を思っているメッセージをすべての人に伝わったかを意識するべき。
  • 発声のトーンは良いが、どうしても語尾の声が小さくなる。(マイクを使う、あるいは出だしの音の高さを上げておくと、語尾も発声が綺麗になる。
  • 強調したい、譲れないところはしっかり厳しくいう。普段と重要なところのメリハリをつける。
  • 例示については、世代や教育、バックグラウンドの違いを乗り越えて皆にわかるかを考える。(バブル期の話を持ち出しても、若い人はわからない!)
  • 最初の2分で結論を伝える。
雑学かもしれぬが、1秒は、「天気予報です。」のフレーズではかる。3秒なら3回繰り返す。
なるほど話す専門家だと思いつつ久し振りに役立つ話を聞かせてもらった。

2019/05/08

間違いだらけのコンプライアンス経営 蒲俊郎著

コンプライアンスの本は山ほど出ていて、それぞれに良書がある。
弁護士である蒲氏が著されたこの「間違いだらけのコンプライアンス経営」は、我が意を得たりの表現がいくつもあるので書いておく。なお、自分の考えも含めて書くので、蒲氏の文章と違う部分があることに留意のこと。

コンプライアンスを、イコール法律遵守と誤解している人が多い。大企業経営者であっても、その例に漏れない。またコンプライアンスが重要だと本気で思っている経営者もまだ少数である。何故か。コンプライアンスでは儲からない、そう考える人が多いことと、法律的な文章が苦手であくびがでそうな人が多いのだろう。

私の概念では、というより京セラ創業者の稲盛和夫氏の表現だが、「人間として善と思う事を行い、人間として善としないことは行うべきでない。」に集約される。
数学の集合を使って説明すると、人間として善なり、という大きな集合体の中に法律という小さな集合体がある。だから法律的に問題ないから良いのだ、という判断は間違っていると言って差し支えない。

文中にジョンソンアンドジョンソンの新氏の話が引用されているが、同氏が本社のCEOと最初に合った時に経営者として重要なことは何か聞いたところ、CEOのジェームズ・パーク氏はこう答えたという。
「平均以上の知性と、極めて高い倫理観」
成績が良いよりも、高度な倫理性を持っていなければ経営はできない、という事である。
何故そう思うのか、私の解釈は、会社の存続においてもっとも大切なものだから、である。つまり、人に後ろ指をさされない、まっとうな会社であり続けることは、会社の永続性に極めて高い相関性がある、ということだと考える。

私が以前勤務していたドイツの化学・医薬メーカーには6つのビジョンがあり、それを社員が共有することこそに、一緒に働く意味があるとしていた。その一つにIntegrityがあった。このIntegrityは、蒲氏によると欧米では大きな潮流になっているそうである。
これは誠実、高潔、真摯などを表す言葉であるが、つまり紳士たれということで、上記の倫理性、あるいは稲盛氏の人間として善たれ、につながる。

もう一つの視点として蒲氏が挙げて興味を持つのが古くから近江商人に伝わる「三方良し」の考え方である。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三つが備わり、良い商売が長く続けられるという心得だそうである。WIN-WINだけでなく、WIN-WIN-WINである。

この件で思い出すのが、以前勤務していたある大手メーカーの海外支店で、若手のアドミニストレーターが昼食時にネットでポルノっぽい画像を見ていたのだが、その付近の座席の女性が非常に不快な思いをし、上司に告げて戒告を受けた件である。それ以前でもe-learning等で何度も教育を受けてきたが、例えばセクハラ、パワハラは、加害者側にそのつもりが無くても、被害者側がそれを不快と思えば成立する。
ここまで極端に分かり易い例えでなくとも、茶髪の営業社員だとどうだろうか。美意識の観点で本人は良かれと思っている、会社としても髪の色まではルールに規定していない。問題はステークホルダーはどう考えるかである。客は、社員は、どう思うのか。

世の中には新しい技術やメディアが登場して、昨今はバイトテロと呼ばれるような、大手レストランチェーンのバイトが厨房で肉を床にべたりと擦って調理をする。それをそのまま客に出すなどの例があった。これをYoutubeに上げる神経がすでに私には理解不能なのだが。
もちろんこれは法的に規制はできる可能性がある。ただし、客がお腹を壊して、その肉についたばい菌との因果関係を証明する必要がある。勿論コンプライアンスルールにはそんなことまで想定して「やってはいけない」と書かれていることはまずない。ではどうするのか。

Youtubeに上げて、世間に対してレストランチェーンのブランド価値を下げた、というのがコンプライアンス上の指摘としてできるだろう。ただ、それ以前に「人間として善なのか」、あるいは蒲氏が例とする「三方よし」の精神なのか、を考えれば良い悪いは明らかである。

二つ、最後に付け加える。
蒲氏は、「魚は頭から腐る」という表現を引用している。経営者の倫理観が最も重要だという事である。大きな会社になればなるほど、問題は現場で起きる、上層部に報告されたときはかなり時間がたっており、いまさら問題になるからとして隠蔽する、それが外部告発されて社会的な問題に発展するのが典型的なパターンである。
経営者は、不断の努力により倫理観を会社全体に沁みとおらせると共に、何か起きた場合にそれを適切に、公明正大に処理する勇気をもっている必要がある。
もう一つは、内部通報制度の適正化である。一応内部通報者の利益を守る法律ができているが、実際のところはあまり成果を上げていない。やはり社内で白眼視され、会社に居づらくなるのである。米国などでは内部通報者には奨励金が出されるなどの例が出てきており、いろいろな方法が今後も出てくると思うが、繰り返しになるが基本的には経営者が先頭に立ってコンプライアンスの重要性を企業文化にしていき、少しでも早く間違っているものが正せるようにすることが肝であろう。

蛇足かも知れぬが、社員、同僚を人として常に尊敬して接しているかどうかが大切である。
相手のことを思いやりながらであれば、少し強い指導であっても、伝わる。
何故ならば人間というのは凄いもので、相手の0.1ミリにも満たない表情の変化から、嘘をついているのか、自分を思って言ってくれているのかをかなりの確度で読み取れるものである。パワハラなのか、熱血指導なのか、グレーな部分はどうしても残っていくが、最後は人間として善と信じ、人を人として尊敬する行動がとれているかどうか、それを常に自分に問いかけないといけないのである。