2013/07/15

自国民を守る! 海外と日本の違い

 イギリスに住んでいるときに、さすがは元世界帝国と思えることが幾つかあった。その一つが世界の隅々で起こる事件にイギリス人が絡んでいることだった。ビジネスや学問、旅行はもとより、自分探しの放浪というのだろうか・・とにかくあちこちにいる。面白いのは旧植民地の移民もイギリス人なので、故郷に帰ると、例えば香港に居るBritish、つまりイギリス人ということになる。人種は関係ない。

 2000年前後と記憶する。インドのかなり山奥の固有文化を持つ地方で、親の決めた結婚を拒否して、実家に「監禁」されているBritishが居るということで大騒ぎになった。どう救出するかがメディアでも話題になり、軍事行動を起こして救出に向かうべきという議論が盛り上がった。結局、みずから逃げ出して帰ってきたと記憶している。
 最初このニュースを聞いても、全体の構図がよく分からなかったのだが、つまりインドの同地方出身の女性がイギリスに留学し、そのまま国籍を取ってBritishとなった、その後里帰りの際に親に地元での結婚を強要された、という話で、つまりアングロ=サクソン人ではなく、イギリス国籍を持った生粋のインド人女性なのだった。
 イギリス国家はBritishを保護することを強く求められている。実際に軍事行動を起こして救出に向かう事例は多い。欧州諸国の事情はよく知らないものの、おそらくこの姿勢は大きく変わらないと思っている。その際に、その自国民が何故そこに居たのかはあまり問題ではなく、そこに居るのが自国民であること自体が行動を起こす大きな動機になる。

 日本はどうだろうか。
 2004年にイラクで活動をしていたヨーロッパ各国、日本などのボランティアが誘拐され、人質になるという事件があった。「危ないのが分かっているところにわざわざ行くなんて、なんとハタ迷惑なことをするのか」。早く救出をするべきという反応よりも、自分で責任を取りなさい、という雰囲気だった。国際的な世間体を気にする内向き発想といえる。同じく人質となっていたフランスやイギリス人が自国に帰って大歓迎を受けたのと比べるとあまりにも違っていた。

2013/06/29

固定費を上げない工夫とタイミング

 或る大手製造業のトップは経理畑出身。たたき上げで修羅場をくぐっている。
とにかく固定費を上げないようにしている。増員は認めない。それどころか退職者が出てポジションが空いているのにも関わらず、なかなか代わりの採用を承認しない。開発用の検査機が壊れても、なかなか交換を認めない。部下からすると困ったものである。売上の調子は最高、利益率最高、いまどき年々右上がりである。なのに、この引締め。・・・単なるケチなのではないか、自分のボーナスをもっと上げるためのパフォーマンスではないか?
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 先日読んだ稲盛和夫氏の本でも触れられていたが、生産能力が上がると言って高い装置を導入しても、それによって製造コストが上がってしまうとしたら何にもならない。古い機械をだましすかしして作る方が、コストは低いまま、かつ実際の生産量も上がることがよくある。最新鋭という言葉に惑わされてやたら投資するのは考えものだという一節があった。

 以前勤務していた会社でも20年ほど前に、猛烈に成長した時期があった。仕事も増えるので仕方なかったろうが人員を大きく増やした。それが10年ほど前から市況の変化もあって右下がりになる。本来は資産であるはずの巨大な人員が、逆に足かせになっていった。
 一度ネガティブスパイラルに入ると、成長のための投資をする余裕もなくなるものだ。あり金すべてをつぎ込んで買った馬券はそうそう当たらない。却って泥沼にはまっていく。

 ビジネスが順調な時ほど、設備投資に対する考え方が緩む。勝って兜の緒をしめよ。
お金の余裕があるからこそ、成長のための重要な投資もしっかりと考えてできる。成功の確率も上がる。 
 ケチと評判の、このトップの舵取りは案外まともなのかも知れない。